コンテンツへスキップ

卵よりも軽いゲーミングマウス、たった39グラムの『COX CM600』をレビュー

 2020年に入り、各メーカーが新しいマウスを発表・発売している。もはや100グラムを超えるマウスはゲーミングマウスと呼ぶに値しないほど、軽量化デザインが施すことがゲーミングマウス業界のスタンダードとなりつつある。

 その中、年明け早々に台湾のゲーミングデバイスメーカー「i-Rocks」がコミュニティをあっと驚かせるマウスを公式Facebookで発表した。これまで世界最軽量のゲーミングマウスといえば、ホイールやサイドボタンを排除した23グラムの「Zaunkoenig M1K」だが、一般的なデザインとしては39グラムのこのマウスが記事執筆時点で発売されているマウスの中で最軽量である(センサー部のみで33グラムの「Mad Catz R.A.T. 1」はレギュレーション違反で除く)。

i-Rocksは発表以降、このマウスに関連する追加情報はない…

 このマウスが発表された後、中国・深センのゲーミングデバイスメーカーHAVITが「MS815」という同型のマウスを公開した。同社はアリババ上でOEM・ODMに関するページを公開しているため、HAVITがデザイン・製造をしているといったところだろう。

 情報は発表されたものの発売はされていなかったこのマウスであるが、韓国のPC周辺機器メーカーABKOの姉妹ブランド「COX」が2020年9月2日、発売にこぎつけた。前置きが長々となってしまったが、そんなマウスが今回紹介する”卵よりも軽い“たった39グラムの「COX CM600」というわけだ。

 

COX CM600のスペック表

CM600
カラーブラック
センサーPixArt PMW3360(光学式)
最大トラッキング速度250ips
DPI400/800/1200/1600/3200/6400/12000(100刻みで変更可能)
マイクロスイッチHuano Blueshell White dot(耐久回数2000万回)
LEDなし
本体サイズ61(W) x 104(D) x 36(H) mm
重量39g(ケーブル含まず)
価格37500ウォン(約3400円)

詳細はこちら

 

パッケージ

センサー欄にシールが貼り付けてあるが、印刷ミスなのか本来はPMW3389の予定だったのかは剥がしてみるまで分からない。

 

 

 

 内容物はシンプルに説明書兼保証書とマウス本体のみ。37500ウォンという破格の安さを実現するためか、最小限の仕様になっている。替えのソールは付属していないものの、後述するデザインでこれを補っている。

 

詳細レビュー

デザインの元ネタ

卵型のデザインで非常にシンプルなデザイン。ゲーム向けのクローンマウス(Skydigital NMOUSE 4Kなど)はあまり製作されていないものの、一般向けで似ているマウス(ASUS製など)がいくつか存在する。

 CM600のデザインは通称:LMOこと、「Logitech Mini Optical Mouse」が元ネタになっている。しかし、CM600発表以前から中国のゲーミングデバイスメーカー”commatech”の「FKMINI」や韓国のゲーミングデバイスメーカー”Thinkway”の「CROAD M325」(こちらはODM品)というマウスがあるため、金型やモデル的にはこちらのデザインが流用されているのだろう。現行のマウスだと「Logicool G-PRO(有線モデル)」が最も近いと思う。

マウス表面&裏面

 マウス表面はUVコーティング処理が施されていて、マットな質感。汗に強いく、長時間の使用でも快適に使用できる。これまでのハニカム構造を採用した軽量型マウスは六角形の穴が無数に空いているものしかなかったが、CM600は幾何学的な模様で若干見栄えが良い。

 メインボタンには耐久回数2000万回のHuano Blueshell White dotを採用しているため、柔らかさの中にしっかりとしたクリック感のあるバランスの良いスイッチといえる。最近のゲーミングマウスに採用されているOMRON D2FC-F-7N(20M)、D2FC-F-K(50M)とは異なるクリック感のため、その点は留意していただきたい。メインボタン自体は構造上遊びが少なく、過度な沈み込みはない。

 ソールはどこからどう見ても「Logicool  G-PRO(有線モデル)」と同じ形状であるが、替えのソールがないため、こちらで検証はできていない(後日、検証予定)。マイナーなマウスの欠点として挙げられる交換用ソールの少なさも、有名なマウスと同じ形状を採用することでその欠点をカバーすることができている。

マウス側面

グリップ感を向上させるためか指が触れる部分にはパンチングが施されていない。さらに軽量化することもできそうだが、この点はトレードオフになってしまう。

 小型マウスの宿命とも言えるが、サイドボタンはかなり細目で最小限のデザイン。サイドボタンに重要なコマンドを割り振る人や多用する人にはこの点がネックになるかもしれない。サイドボタンはマイクロスイッチを採用しているが、かなり柔らかめのクリック感になっている。DPI変更ボタンはタクタイルスイッチでポコっとした感覚がある。もっともDPI変更ボタンは多用するボタンではないから、特に違和感を感じることはないだろう。

ホイール

 ホイールは最近のマウスでは珍しい切り込みのないタイプで黎明期のゲーミングマウスを彷彿とさせるデザインになっている。見た目とは対照的にややゴリゴリ感があるものの、少し緩い。1ノッチごとの正確な操作はやや難しいが、通常ゲームで使用する分には不自由なことはない。

ケーブル

 最近のマウスでは珍しくないパラコード風のケーブルは取り回しやすさに定評があり、その扱いやすさから「まるで無線マウスを使っているかのよう」と評されることが多い。厳密には本家CeeSAのパラコードや後発の製品に比べ、線材が1本多く、やや硬いため、従来のケーブルより柔らかいぐらいだ。

 

MM710との比較

 マウスの中でも小さめなCooler Master MM710(116.6(W) x 62.6(D) x 38.3(H) mm)と比べて、CM600(104(W) x 61(D) x 36(H) mm)は一回りほど小さい。普段から大きめのマウスを使っている人はかなりギャップを感じるはずだ。CM600の軽量化の要因は細かなパンチングだけではなく、マウス本体のサイズが小さいことが大きく影響しているだろう。

 

分解画像

引用元:나윤테크

 上記の画像は韓国のマウス修理業者がCM600の分解画像を公開しているもの。OEM・ODM生産を目的としてデザインしているためか、センサー下部に「3360/3389」とプリントされている。CM600はPMW3360が搭載されているが、同型のデザインを使った後発の製品にPMW3389が搭載される可能性も高いだろう。

 中身のプリント基板はこれでもかというほど小さい。基盤自体にも徹底的にパンチングが施されている点に「極限まで軽くしたい」というデザイン側の意図を強く感じる。正直、このパンチングが軽量化に大きく影響していることはないと思うが、細やかな気配りは素晴らしいと言わざるを得ない。

 

センサー

 CM600では最大解像度12000DPI、最大トラッキング速度250ipsのPixArt PMW3360を搭載。上位センサーのPMW3389(16000DPI/400ips)に比べると、スペック面ではやや劣る。わかりやすく置き換えると、250ipsは毎秒6.35m、400ips(400in/s)は毎秒10.16mまでトラッキング可能である。最大トラッキング速度が高ければ高いほど、ゲーム中の急な激しいマウスの操作(例:FPSのフリックショット)の際に正確にトラッキングすることができるということになる。

 私は250ipsをFPSをプレイする際に最低限必要といえるスペックと認識していて、余裕を持たせるためには400ipsが必要だと考えている。ただし、センサーにはファームウェアやマウスパッドとの相性、好みなどがあるため、一概にスペックが良ければ良いというわけではない。

 センサーの疑似的検証ソフトウェア「Mouse Tester v1.2」を使用してテストを行った。環境は以下の通り。

ソフトウェア:Mouse Tester v1.2
マウスパッド:ARTISAN 雷電 MID NINJA FX XL
ポーリングレート:1000Hz
OSマウス感度:6/11
PC環境:https://re4ction.org/archives/2273

 センサーの相性があると言われているARTISANの雷電シリーズだが、これらのグラフを見る限り問題なく安定している。1400DPI設定でLeague of Legendsを数戦プレイしたが、マウスポインターの飛びやセンサーの異常を感じることはなかった。

 

ソフトウェア

ボタン設定

 

 ボタン設定では、マウス・DPI変更・間隔をあけたクリック・キーボード・マルチメディア・システム機能・オフィスショートカットが設定できる。アニメーションはなく、設定をすることがメインで動作の軽いソフトウェアとなっている。簡易的なUIデザインと原始的な操作方法だが、ごちゃごちゃしたソフトウェアよりもかえって良いのかもしれない。

マクロ設定

 ボタンごとにディレイが設定可能でマクロも問題なく組むことができる。もちろん編集することもでき、他のマウスと同様の操作感で特に違和感はない。マクロはインポート(入力)・エクスポート(出力)ができる。

DPI・ポーリングレート設定

 DPIは400~12000までの間で100刻みで変更可能。最大7つまで可変設定ができる。ポーリングレートは125/250/500/1000Hzが選べる。Windowsセンシの設定はマウスのアイコンをクリックすることでWindows標準のツールが起動する。

 

まとめ

・39グラムの圧倒的な軽量デザイン

・PMW3360を搭載

・37500ウォンという破格の価格設定

 「COX CM600」は、とにかく軽量化を追求したマウスとして文句のない完成度といえる。以前に私が使用していた「Cooler Master MM710(53グラム)」との差はわずか14グラムだが、しっかりとその差を感じることができた。CM600はマウスの軽さが操作感に直結することを再確認できる。

 欠点としてホイールが緩めホイールが挙げられるが、マウスに大きな欠点は見受けられない。日本ではあまり馴染みのないブランドではあるが、全体的に簡素な点を除けばセンサーやソフトウェアなども大手他社の仕様と何ら遜色もなく、メーカーの能力による差はまったく感じない。

 記事執筆時点では日本での発売予定はなく、新しく代理店ができない限り、日本で発売されることはおそらくない。韓国国内でのみ販売されているため、入手するためにはかなりハードルが高い。ただ記事中でも述べた通り、OEM/ODM品として出回る可能性は高いので多くの人はそれらを待つことしかできないが、試す価値のあるマウスであることは間違いない。

 

[以下のリンクからPaypal経由で100円からドネートすることができます。ご協力のほど、よろしくお願いしますm(^._.^)m]

https://ko-fi.com/mush1to


「卵よりも軽いゲーミングマウス、たった39グラムの『COX CM600』をレビュー」への2件のフィードバック

  1. ピンバック: むしにゃんこ最新PC・デバイス環境 | RE:Action!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です